ハロプロDD soramiの囁き

ハロプロについて、あれこれと思いを綴ります。

成長するための組織の在り方とはーハロプロの新体制の目的を更に考えるー

  ハロプロの話に進む前に、先に生物学の話をする。なぜなら理論(法則)を踏まえて、現象を解釈する方が、より正しい解釈が可能となるだろうからだ。

 人類が他の生物と違い、ここまで繁栄できた理由は何か。それは一言で言えば、変化してゆく環境への対応力が高かったからである。そしてその対応力を生み出すもとになったのが、本能という自己内部の要素だけではなく、経験やそれの整理、更には学問を通じての、外部の知恵というものを取り込むことであった。但し、それを取り込むことは容易なことではなかったはずである。なぜなら、生体は今までの自己(身体的、精神的、行動的自己)を維持させようとする免疫的なシステムを備えているからである。だから新たなものを取り込むためには、本能だけではなく、今まで作り上げてきた自己からの、従来の自己を守り続けようとする抵抗を排除する必要がある。そういう点で、新しいものを取り込もうとする意識は、従来の自己にとっては、自己を破壊させてしまう敵になってしまう可能性があるものとなる。
 しかし、結局、多くのものが滅んでいったのは、従来の自己=免疫システムが、新しく成立した環境に対応しようとしている、自己内の抵抗分子=自己更新システムを、否定した結果、新しい環境に対応できなくなった結果と考えられる。そして人類においては、環境が悪化しきってしまう前に、種の遺伝子を安定的継続的に守るために、自己更新システムが緩やかに柔らかく作動できるように、恒常的に、免疫システムを弱めさせる、隔壁解放―外部要素導入システム=選択通過システムが作用しているのではないかと考えられる。免疫抑制剤などの強力なものをいきなり取り込むのは、種の遺伝子の安定性を損なうことに繋がるので、外からの刺激を絶えず少量ずつ与えることで、少しずつ更新、強化させているのである。つまりは、自己更新システムの中核を担っているのは、皮膚のような、境界線上に成立している選択通過システムであり、それが免疫システムを相対化させることで、自己の更新を可能にさせているということである。

 

 ところで成長するとは自己更新していくことである。そしてその成長の対象は個であるとともに組織でもあると言える。もっと言うなら組織化された個であるといえる。個は成長するために、その個を組織として構成しているところの各要素そのものや、組織の在り方自体を更新させ続けていくことが必要となる。それは個の内部だけで完結することではなく、当然新しい要素を外部から取り込むこと、その取り込んだ要素を組織化することも必須となる。だから選択通過システムは当然、外部の状況変化と、内部の組織の状況を対応させながら見て、不足してきているものが何かを察知し、それを外部から探してくること、更には組織のどこにどのような形で、どういう過程で位置付けるのか、といったことを考えながら、その不足物を自分の方に引き付けて、中に取り込むということをしなくてはならなくなる。そして、この動きが不適切であれば、その組織は時代や社会の変化に対応できずに、滅んでいくこととなる。

 

 以上のことを踏まえて、ハロプロの新体制といったことを考えてみると、非常にわかりやすくなる。時代状況が変わる中で、ハロプロという組織自体が、時代に合わせて更新されてゆくことが必須となるが、そのハロプロという組織の中核をなす各グループというものが、互いに組織化されているかどうかという問題がまずある。ハロコンやシャッフルなどはあっても、組織化され有機的につながっているかと言えば、そうではなく、分社的に独立採算的に動いているという面は強かった。
 各グループが固定化されることによる問題点が何かを考えた時に、そのグループ内の各要素=メンバーやマネージャー、の相互の努力による成長の限界があるのではないかということである。
 たしかに卒業や新メンバーの加入という活性化はあったが、デビュー前の人数の増減を除けば、新体制以前では、こういう活性化はモーニング娘。アンジュルムだけで行われていた。

 こういう状況の中で、ハロプロの組織化と各グループの更なる成長を目的にした場合、それを可能とする方法として、カントリーガールズのメンバーの、他のグループへの出向が考えられたのである。いわば、カントリーガールズを、ハロプロの組織化の中心として、更に各グループの成長の媒体として利用するというのが、新体制の意図であったと考えられる。
 しかも、ここで大事なのは、カントリーガールズというグループは、中心部分が維持されていることであり、出向している者が時々戻ってくることで、カントリーガールズ自体が、ハロプロ組織の中心として、各グループの成長の方向性を含む様々な情報が集まってくるセンターともなり、かつ、それを取り込むことにより、カントリーガールズというグループ自体が、自己を大きく自己更新できるという形になっていることである。

 

 この新体制への計画が、どの時点から始まっていたかについては、よくわからないが、ベリーズの無期限活動停止、カントリー娘。のメンバー募集、そして嗣永桃子が期限付きでPMになるということが決まった時点では、ほぼ青写真はできていたのではないかと考えられる。そうであってこそ、カントリーガールズに対する手厚い支援(メンバーの、慎重にして効果的な選択と追加、素早いメジャーデビュー、衣裳やMVなどの各意匠に対する配慮等)、が行われ、各メンバーに対する支援も充実し、メンバーも順調に成長したと考えられるのである。
 そして予定されていたももち卒業の発表を契機に、カントリーから出向させるという当初の予定に従い、出向させるメンバーと残留させるメンバーの選定、更にどこに誰を行かせるかについても、メンバーの状況を踏まえつつも、おそらくはももちともいくらかは相談しながら、何度も検討されたと考えられる。

 

 更にその際に、研修生の誰と組み合わせて一緒に行かせるのかということも考えられたはずである。なぜなら、研修生だけをそのままグループに、新しく加入させるよりは、先輩的存在と一緒に入る方が、精神的にも安定するし、同時に精神的にも技術的にも成長を促すことにもなるからである。このことは、やなみんと段原のjuice=juiceへの加入、ふなっきと川村のアンジュルムへの加入だけではなく、一岡新グループにおける一岡と他の研修生、桃姫高瀬の新グループにおける、2人と他の研修生の関係も、そのことを踏まえた結果であり、この2つの新グループの結成に時間がかかったのは、一岡や桃姫、高瀬に、研修生ではなく正規メンバーとしての経験を一定期間積ませ、先輩的存在に変えるためであったと考えられる。

  そしてこれらの必要性が実験、実証されたのが、カントリーガールズにおける、ももちのPMという形での参加である。これが成功したがゆえに、先輩的存在と研修生を組み合わせてセットとして、従来のグループに加入させたり、新規グループを立ち上げたりしているのであり、2つの新グループも、カントリーや新体制による各グループの活性化という実績を踏まえた上での、更なる実験的なグループであることは確かである。そして、このような形で、研修生メンバーだけでのグループを作らないようにしたのは、こぶしにおける3名の離脱の反省にも基づいてであろう。
 尚、2つの新グループのリーダーたちと稲場と一緒に組ませたのは、リーダーたちを鍛え、正規メンバーとしての経験を積ませるためだけではなく、稲場のグループへ戻るためのリハビリと共に、稲場のリーダーシップを鍛えるためでもあり、稲場の様々なスキルを吸収させるためでもあった。

 

 長くなったので、とりあえずここで一度まとめるが、表面に見えている事実だけで解釈することも、自分の思い込みだけで、見えている事実から解釈してしまうことも、その解釈を間違えさせる元であるし、見えていないことの中にこそ、本当に大事なことが隠れているということを踏まえて、ハロプロ20周年を迎えての新体制というのは、決して単なる思い付きでもなんでもなく、かなり練られた計画であるということは意識しておくべきであろう。そしてそれを前向きに評価し、支援していくことこそが、今のハロプロのヲタに求められていることだと考える。